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東京地方裁判所 昭和37年(わ)59号 判決

主文

被告人小竹同高柳を罰金一万円に、

被告人根本同三枝を罰金五千円に処する。

右各被告人等においてそれぞれの罰金を完納することができないときは金五〇〇円を一日に換算した期間当該被告人を労役場に留置する。

訴訟費用中証人村山一枝同町田えみ子同熊膳千恵子同永井マサ同加納ふみ子、同遠山サイに支給した分は被告人小竹同高柳の連帯負担とし其の余は被告人等の連帯負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人等は、昭和三七年一月施行の参議院議員通常選挙に際し、東京地方区から立候補した共産党の野坂参三に投票を得しめる目的をもつて、同候補の選挙運動のため、同年六月二五日東京都〓飾区小谷野町四七番地被告人高柳宅に、被告人根本同三枝、佐々木茂、湯浅秀夫等が集合したさい被告人高柳は「現在の段階では未だ野坂参三はあぶない」、「選挙まであと何日もないから明日から小竹さんのところに行つて署名運動をやつてくれ、やれば野坂さんの票がいくらかでも増える」「署名運動の用紙などは小竹さんの家にある」などとのべ、翌二六日同都〓飾区小菅町一四九番地被告人小竹方に被告人根本同三枝、佐々茂等が集合したさい被告人小竹は「選挙も間近いからやつてくれ署名簿と一諸にアカハタも持つていつてくれ、ハタは一部五円で買つて貰え、そうすれば共産党のことがよく解るし、選挙でも有利になるだらう」などとのべ、こゝに被告人小竹同高柳は被告人根本同三枝、佐々木茂、湯浅秀夫等と共に前記野坂参三の選挙運動のため戸別訪問及び署名運動をなすことを共謀し

第一、被告人小竹同高柳は佐々木茂他二名と前記のごとく共謀のうえ、右佐々木茂他二名において別紙一覧表(其の一)記載のとおり同年六月二六日右選挙区の選挙人である同都〓飾区下千葉町四二四番地母子住宅内村山一枝方外五ケ所を戸別に訪問し、同人等に対し、物価値上反対運動に名を藉りて、日本共産党の名称を云いあるき、かつ同党名の記載のある署名簿を示して署名を求め、

第二、被告人小竹同高柳同根本同三枝は佐々木茂と前記のごとく共謀のうえ、被告人根本同三枝及び佐々木茂において別紙一覧表(其の二)記載のとおり同年六月二七日右選挙区の選挙人である同都〓飾区下千葉町九六八番地帝都自動車社宅内堀江匡子方外一二ケ所を戸別に訪問し、同人等に対し、前同様の方法で、日本共産党の名称を言いあるき、かつ同党名の記載のある署名簿を示して署名を求め、

第三、被告人小竹、同高柳同根本同三枝は湯浅秀夫と前記のごとく共謀のうえ、被告人根本同三枝及び湯浅秀夫において、別紙一覧表(其の三)記載のとおり同年六月二八日右選挙区の選挙人である同都〓飾区下千葉町五五五番地民生福祉住宅内野崎さと子方外一ケ所を戸別に訪問し、同人に対し、前同様の方法で、日本共産党の名称を言いあるき、かつ同党名の記載のある署名簿を示して署名を求め、

もつて、右選挙に関し、署名運動をするとともに選挙運動のため戸別に政党の名称を言いあるいたものである。

(証拠の標目)(省略)

(法令の適用)

被告人等の判示各所為はいづれも包括して公職選挙法第一三八条第二項第一三八条の二第二三九条第三号第四号刑法第六〇条に該当するところ、以上の各罪はそれぞれ一個の行為で二個の罪名に触れる場合であるから刑法第五四条第一項前段第一〇条により重いと認める戸別訪問の罪の刑に従い、各被告人につき所定刑中罰金刑を選択し、各被告人を主文第一項の刑に処し、右罰金を完納することができないときは刑法第一八条により各被告人につき主文第二項の期間当該被告人を労役場に留置し、訴訟費用は刑事訴訟法第一八一条第一項第一八二条により主文第三項掲記のごとく被告人等の連帯負担とする。

よつて主文のとおり判決する。

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